塗料や接着剤として優れた特性を持つ漆は、古来より仏像や絵画、神社仏閣の建造物などに使われてきました。先人たちは、漆の持つ特性をよく理解し、その力を最大限に発揮させることで、日本の文化を守り伝えてきたのです。
2018年度から、文化庁は国宝・重要文化財建造物の保全修理に、原則として国産漆を使うことを決定しました。減少が進む国産漆の保護も目的ですが、何世紀にも渡って文化財を守り抜いてきた漆の力を、再評価したからに他なりません。現在、二戸市を中心とする生産地では、安定的な供給を目指して、生産に携わる人材の育成にも取り組んでいます。
国産漆を使用した重要文化財の修復例
・中尊寺金色堂(岩手県)
・日光の社寺(栃木県)
・金閣寺(京都府)
・鶴岡八幡宮(神奈川県)
仏像制作や装飾を施す際の接着剤として、建造物の美しい塗料として、あるいは耐久性を高める補強剤として、様々な顔を持つ漆。そうした漆の力が、多くの文化財を守り、後世へとつなぐ重要な役割を果たしています。