現在、国内で流通している漆の97%以上が輸入によるもので、国産はわずか3%。そのうちの約7割が岩手県二戸市で生産され、「浄法寺漆」のブランドで出荷されています。県北部に位置する二戸市は、もともと漆の木が豊富な地であり、江戸時代には盛岡藩の貴重な産物とされ、その約47%を二戸地域が産出していたという記録が残っています。
明治時代には、福井県から「越前衆」と呼ばれる漆掻き職人が岩手県に出稼ぎにくるようになり、新たな漆掻きの技術や道具をこの地にもたらしました。しかし、第二次大戦以降、時代や生活様式の変化、安価な輸入漆の増加に伴い、国産漆の需要は激減しましたが、日本を代表する国宝建造物の修復に使用されたことで、その品質の良さが再評価。文化庁が、2018年度から国宝などの建造物の修復に国産漆を使用する方針を通達したことで、改めて二戸市が産する漆に対する注目が高まっています。
一本一本の木から手間をかけて採取され、丁寧に処理される「浄法寺漆」。その高い品質が、日本の文化と伝統を支えています。