妊娠前も妊娠中も、食事はバランスよく、適量を食べることが大切です。『妊産婦のための食事バランスガイド』を参考にしましょう。
ポイントの一つは、エネルギー(カロリー)の帳尻だけあわせないことです。たとえば「今日はケーキを食べたから夕飯のごはんは食べない」「忙しいから朝食は菓子パン」ではいけません。好きなものや同じようなものばかりでは栄養がかたよりますので、「食にの中身」を考えることが大切です。
妊娠中の母体のとる栄養は、生まれてくる赤ちゃんの骨や歯の健康にも関係しています。妊娠中は、カルシウムだけでなく、たんぱく質、リン、ビタミン A・C・D などの栄養素を含む食品をバランスよくとることが大切です。ビタミン Dは赤ちゃんの将来の骨量を高めるためにも重要で、鮭、いわしの丸干し、さんまなどの魚介類、きくらげや干ししいたけなどのきのこ類などに多く含まれています。
妊娠を望んでいる人や妊娠中の女性は、妊娠前から妊娠初期にかけて適量(1日 0.4mg)の葉酸を摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害(二分脊椎など)の発症リスクを低下させるという報告があります。
また、葉酸は妊娠中の血圧が高くなるのを抑え、 さらに将来の高血圧や動脈硬化、がんの予防にも有用とされています。生涯にわたって十分にとることを心がけましょう。
葉酸は、ほうれん草、ブロッコリー、春菊などの緑黄色野菜や、枝豆、いちごなどにも多く含まれています。妊娠を計画している女性や妊娠初期の女性には、サプリメントの利用も推奨されています。
「主食」を中心に、「副菜」と「主菜」、汁もの・ スープなどを組み合わせると、自然に栄養バランスがよくなります。「牛乳・乳製品」「果物」も組み合わせ、それぞれ適量をとりましょう。なお、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の予防のためにも、塩分は1日7.5g 未満に。調理は「薄味」にしましょう。
主食を中心に、必要なエネルギーをしっかりとります。食事が肉や野菜などの主菜が中心になってしまうと、たんぱく質や脂肪をとりすぎてしまいがちです。ごはん(お米)はたんぱく質も含まれ、脂肪も少なく、いろいろな料理と調和します。
野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維などがたくさん含まれています。きのこや海藻類は低エネルギーで食物繊維が豊富です。ひじきや切り干し大根など乾物も利用し、副菜のレパートリーを増やしましょう。
たんぱく質はからだの骨格や筋肉、皮膚などのほか、酵素、ホルモン、免疫抗体をつくる大切な栄養素。肉・魚・豆類・卵など、 いろいろな食品をかたよりなく、適量をとりましょう。肉は脂肪分の少ない赤身の肉がおすすめです。また焼く・煮る・蒸す・ 炒めるなど、調理法も変化をつけましょう。
日本人はどの世代でもカルシウムが不足しています。妊娠は食習慣を改善するよい機会。カルシウムは牛乳・乳製品のほか、緑黄色野菜、大豆・大豆製品、小魚、海藻類などにも多く含まれていますので、意識してとりましょう。
魚介類は良質なたんぱく質や、DHA( ドコサヘキサエン酸) やEPA( エイコサペンタエン酸) を多く含み、またカルシウム源としても有用な食物。栄養バランスのよい食事には欠かせませんから、積極的に食事にとりいれましょう。ただし、一部の魚介類 (クジラ・イルカを含む)には、 自然界に存在する水銀が食物連鎖によって魚にとりこまれているものもあり、妊婦さんを通じて胎児に影響があるおそれがあるという報告もあります。一部の魚ばかりをかたよって大量に食べず、いろいろな種類の魚を食べるようにしましょう。妊娠に気がついてから食生活に気をつければ、心配ありません。
魚介類に含まれる水銀について、妊婦向けパンフレットが厚生労働省ホームページから入手できます。