漆は、主成分であるウルシオールの含有量が多ければ多いほど、上質であるといわれています。漆の生産地は中国や韓国にもありますが、浄法寺漆は含有量が高く、約70〜75%ものウルシオールを含みます。
漆の中の漆ともいえる浄法寺漆は、採取する段階でも品質が微妙に変わります。一日のうちでも、朝掻いた漆と夕方のものでは質が違い、職人の技術や採取する時期によっても異なるもの。6月から7月に採れる漆は「初漆」、最盛期である8月のものは「盛り漆」、9月に採れる漆は「末漆」というように、時期によってそれぞれの特徴があります。
また、岩手県と二戸市は、2009年に国産漆で初となる認証制度を設定。第三者機関である認証委員会が、伝統的な漆掻きの技術によって、限定した地域で採取され、品質を保証したものだけに「浄法寺漆認証マーク」を付けて出荷しています。職人による丁寧な仕事と厳しい基準によって、「浄法寺漆」の品質が保たれているのです。
枝集めに使うナタ、皮を取るカマ、傷をつける漆カンナ、採取に使うヘラなど、高い技術を持つ岩手の漆掻き職人は、十数種類もの道具を巧みに使い分けます。
金属の部分は鍛冶屋が用意しますが、「柄」をつけるのは漆掻き職人の仕事。カマの突起部分やカンナの柄のおしりの膨らみ具合など、形状の一つひとつに意味があり、自分の手に馴染むように調整し、あるいは自分で道具を作って漆掻きの作業にのぞみます。
新しい道具を使い始める時も、徐々に道具を慣らしていき、7月下旬から8月にかけての最盛期に合わせ、ベストな状態に持っていくのだとか。職人たちは、50年、60年と大事に道具を使い続けながら、一本一本の木に向き合い、丁寧に漆を掻いています。