ウイルスや細菌などの病原体が原因となってうつる病気を「感染症」といいます。人から人へうつるものもありますが、ペットや家畜など動物や、食べ物・ 飲み物から感染するものもあります。妊娠中に初感染すると胎児に影響を与えるものもあるので、感染症が疑われる人は妊婦にうつさないよう配慮しましょう。清潔を心がけ、外出後は手洗いを欠かさないことも大切です。またワクチン(予防接種)のある病気は、周囲の人があらかじめ予防接種を受けることを検討するとよいでしょう(妊娠中や授乳中は接 種できないワクチンもあるからです)。
妊娠4~20週に初めて風しんウイルスに感染した場合、赤ちゃんが難聴・白内障や緑内障・心臓疾患を起こすことがあります(先天性風しん症候群=CRS)。風しんにかかった記憶がなかったり、免疫(抗体)が十分にない女性は注意が必要です(抗体検査は産婦人科でできます)。 また20~30代の男性で風しんの免疫がない人がたいへん多いと推定されています。感染して家や職場などで妊婦にうつさないよう、夫や家族などが予防接種を検討することも大切です。なお、風しん感染がすべてCRSを起こすわけではありません。妊娠週数によってもリスクは違います。不安なときは産婦人科などに相談をし、よく説明を聞きましょう。
免疫のない女性が妊娠中に初感染すると、まれに赤ちゃんに眼の異常や皮膚の萎縮が生じることがあります。妊娠週数によっても異なります。
幼児に多い「りんご病(伝染性紅 斑)」の原因となるウイルスです。 妊娠中に初感染・発症すると、約30%が胎盤を通 して赤ちゃんにも感染し、流産や胎児水腫などを起こすことがまれにあるので、注意が必要です。
性感染症の一つで、単純ヘルペスウイルスが原因です。外陰部に水 疱やかぶれが起こり、一度感染すると体内の神経節に潜伏、妊娠中に症状の出てくることがあります。産道感染すると赤ちゃんが肺炎や脳炎を引き起こすことがあるので、帝王切開が必要なことがあります。
これもヘルペスウイルス科で、やはり体内に潜伏する性質があります。多くの人は成長の過程で免疫(抗体)を獲得しますが、特に妊娠初期に初感染した場合は、胎児に肝障害や難聴などの影響の出ることがあります。
若年層の女性に多い性感染症で、原因はクラミジア・トラコマチスです。自覚症状がないのが特徴で、気づかないまま赤ちゃんに産道感染すると、新生児肺炎や結膜炎を起こします。抗菌薬で、お産までに完治をめざします。
B群溶血性連鎖球菌は女性の腟内や肛門付近に比較的よく認められる細菌です。産道感染すると赤ちゃんが髄膜炎や敗血症などを起こす心配があるので、陣痛時や破水時、母体に点滴で抗菌薬を投与して産道感染を防ぎます (母体に影響はないので、妊娠中は治療をしません)。
加熱が不十分な肉、猫のフン、土 などに存在する原虫です。妊娠中の初感染は、ごくまれですが胎児に影響が出る場合があります。免疫(抗体)があればまず心配はありませんが、ペットのフンの始末など衛生には気をつけます。